「こんなに立派なクリの木でも、2メートル材っていうだけで、役立たずのレッテルを貼られ、砕かれて、チップにされちゃう……。木が、かわいそうだね」いつもは冗談の多い材木屋のOさんがまじめな口調で言った。Oさんの言葉に、建築家のTさんが深くうなずいた。そのうなずきに、意を強くしたのか、Oさんの口調に、さらに真剣さが加わった。「この木で、家を造りませんか。この木を、もう一度、生かして、役に立つ木にしてやろうじゃないの」私と主人は、その言葉に顔を見合わせ、何と答えたらいいのか戸惑い、その場の雰囲気を壊さないように、曖昧に笑った。
(参考情報)
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「こんなにたくさんのクリの木は、2度と手に入らないと思いますよ」Oさんが、困惑する私たちの背中を押すように言った。その時、私たちは、Oさんが前々から少しずつ買い貯めていたというクリの丸太の山の上に立っていた。足で、ゴツゴツと丸太の山を叩きながら、Oさんの言葉に相槌(あいづち)を打っていた建築家のTさんも、Oさんの助っ人になった。「もう、これだけの材は、集めようと思っても、集められないでしょう」感情が顔に出やすいTさんの顔には、はっきりと、僕はクリの木で家を建てたいと書いてあった。代わる代わるクリの木で家を造ることを勧める2人の言葉に、私も主人も、どう答えればいいのかわからないままに、絶句した。
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